京都大学 数理解析研究所 共同研究集会
「乱流研究 次の10年:乱流の動的構造の理解へ向けて」

開催日程 平成 23年 1月 12日(水) -- 14日(金)
開催場所 京大 数理解析研究所 420号室 交通アクセス
研究代表者 藤 定義 (京都大学 理学研究科)


プログラム
(PDF)

1月12日(水曜日)

13:20--13:30 研究代表者 挨拶
13:30--14:00 木田重雄* (同志社大理工),清水雅樹 (阪大基礎工)
歳差回転球体流による磁場形成
14:00--14:30 石澤明宏 (核融合研)
乱流による磁気リコネクション
14:30--15:00 高岡正憲*(同志社大理工),松本剛 (京大院理)
Ornstein-Uhlenbeck過程での大スケール揺らぎの統計則についてII

15:30--16:00 水田敦* ,松本剛,藤定義 (京大院理)
定常2次元逆カスケード乱流の慣性領域は拡がるか?
16:00--16:30 中原明生*,中山寛士,松尾洋介 (日大理工)
ペーストの流れの記憶と粉の協同現象
16:30--17:00 渡邊威*,後藤俊幸 (名工大院工)
大規模並列計算による乱流中の高分子モデルの挙動解析



1月13日(木曜日)

9:00--9:30 有木健人*,半場藤弘 (東大院理)
平均的Lagrange座標を用いた共変的な非一様乱流統計理論
9:30--10:00 田中光宏 (岐大工)
波動乱流における「凍結乱流」現象

10:30--11:30 辻義之 (名大工)
乱流計測がもたらす統計則の新たな解釈

13:30--14:30 大須賀健 (国立天文台)
ブラックホール降着流・噴出流の輻射磁気流体シミュレーション

15:00--15:30 赤嶺博史*,水島二郎,大橋俊介,杉田翔 (同志社大工)
角柱後方カルマン渦列の発生源・消滅と再生
15:30--16:00 出口健悟*,永田雅人 (京大院工)
スライディング・クエット流の線形・非線形解析
16:00--16:30 沖野真也*,永田雅人 (京大院工)
矩形ダクト内流れにおける定常進行波解

17:30-- 懇親会



1月14日(金曜日)

9:00--9:30 有光直子* (横浜国大環情),有光敏彦 (筑波大数理)
マルティフラクタル密度関数理論による乱流PDFの解析
9:30--10:00 本池巧* (湘北短大),有光敏彦 (筑波大数理)
力学系におけるn^∞周期軌道と乱流のマルティフラクタル構造
10:00--10:30 小松崎慎人* (筑波大数物),本池巧 (湘北短大),有光敏彦 (筑波大数物)
n^∞不安定周期軌道の階層構造の解析

11:00--11:30 巽友正 (京大理)
交差独立性完結仮説による一様等方性乱流理論の再考

13:30--14:30 杉山和靖* (東大院工),Rui Ni, Tak Shing Chan, Sheng-Qi Zhou, Heng-Dong Xi, Ke-Qing Xia (The Chinese Univ. of Hong Kong), Richard J. A. M. Stevens, Chao Sun, Detlef Lohse (Twente Univ.), Siegfried Grossmann (Philipps-Universitaet)
二次元熱対流における大規模循環の反転
14:30--15:00 毛利英明 (気象研)
乱流速度場における大スケール変動の統計熱力学形式による記述

15:30--16:00 阿部浩幸*,溝渕泰寛,松尾裕一 (JAXA)
剥離を伴う平板乱流境界層における乱流構造
16:00--16:30 河原源太*,関本敦 (阪大院基礎工),Markus Uhlmann (KIT),Alfredo Pinelli (CIEMAT)
正方形ダクト乱流の二次流れ
16:30--17:00 永田雅人*, 出口健悟 (京大院工)
平面クエット・ポアズイユ流のホモトピー解析


講演者,タイトル,要旨 一覧

阿部浩幸*,溝渕泰寛,松尾裕一 (JAXA)
剥離を伴う平板乱流境界層における乱流構造

我々の研究グループでは,剥離乱流の予測精度の高度化を目的に,剥離を伴う平板乱流境界層のDNSデータベースの構築を進めている.本報では,この剥離乱流のDNSに見る乱流構造の特徴を報告する.


赤嶺博史*,水島二郎,大橋俊介,杉田翔 (同志社大工)
角柱後方カルマン渦列の発生源・消滅と再生

円柱だけでなく角柱後流にもカルマン渦列が生じる.カルマン渦列は振動流であり,その振動発生のメカニズムを調べる.また,角柱のアスペクト比(流れと垂直方向の幅と平行方向の長さの比)が1のときはカルマン渦列は後流長い距離まで安定に存在するが,0.5 位のときは後流のある距離で渦列が消滅し,さらに後流で再生する.カルマン渦列の消滅と再生の原因とメカニズムを数値シミュレーション結果の解析および線形安定性理論により明らかにすることが今回の講演の主題である.


有木健人*,半場藤弘 (東大院理)
平均的Lagrange座標を用いた共変的な非一様乱流統計理論

非一様乱流の解析的手続きとして,座標変換に対する共変性を明確に保証する理論の構築を試みた.当理論は主として2-スケール直接相互作用近似理論(TSDIA)の手法を踏襲して構成されるが,TSDIAと比較して,座標変換に対して共変的ないし不変な量を選択的に取り扱うことに努めた.これにより,TSDIAが可能としてきた種々の統計量のモデリングを,共変性が保証された形で行うことができる.


有光直子* (横浜国大環情),有光敏彦 (筑波大数理)
マルティフラクタル密度関数理論による乱流PDFの解析

発達した乱流では,エネルギー散逸率や速度差などのPDFが裾を引くことが知られている.その裾部分には,乱流の間欠性に起因する「乱流のコヒーレントな運動」が反映する.中心部分は,このコヒーレントな運動に纏わり付く,「乱流に特有な揺らぎ」の情報が含まれている.

マルティフラクタル密度関数理論(MPDFT)では,裾引きPDFを解析する理論表式が導出され,これにより,上記の情報を高精度で抽出することが可能となった.

乱流の間欠性は,Navier-Stokes方程式が有するスケール不変性に基づく自己相似性の顕れである.その特性を抽出するためには,スケールを変えた一連のPDFの情報が必要である.一連のスケールは観測者が指定する拡大率δ(>1)で与えられるものであり,δの値が,乱流系の観測量に影響を与えてはならない.この要請から,乱流の新しい解釈への可能性が見えてきた.

今回の講演では,乱流風洞実験(毛利ら)や4096^3乱流DNS(金田,石原ら)で得られた一連のPDFを,MPDFTで導出したPDFにより高精度で解析する.その解析で抽出された情報と共に,拡大率δ非依存性の検証を報告し,今後10年の乱流研究へのひとつの方向性を提唱したい.


出口健悟*,永田雅人 (京大院工)
スライディング・クエット流の線形・非線形解析

軸方向に速度差をもつ同軸二重円筒管内の流れはスライディング・クエット流と呼ばれる.このモデルは内外半径比→1とする狭間隙極限で平面クエット流となる.半径比を変化させることにより平面クエット流がもつ常に線形安定という性質とその非線形解が曲率の影響でどう変化するかを示す.


石澤明宏 (核融合研)
乱流による磁気リコネクション

乱流によって生じる磁気リコネクションを,二流体シミュレーションを用いて調べた.その結果,電流シートが十分厚く自発的な磁気リコネクションに対して安定であっても,乱流により巨視的な磁気島が形成されることを示した.従って,乱流は,自発的な磁気リコネクションの理論に基づく磁気島形成の閾値を変更する.乱流が強いほど幅の広い磁気島が形成される.そして,その形成過程は小さな磁気島の合体である.


河原源太*,関本敦 (阪大院基礎工),Markus Uhlmann (KIT),Alfredo Pinelli (CIEMAT)
正方形ダクト乱流の二次流れ

正方形ダクト乱流に見られるプラントルの第二種二次流れの生成メカニズムを直接数値シミュレーションで得られた乱流の観測結果とナビエ・ストークス方程式の非線形平衡解によって説明する.


木田重雄* (同志社大理工),清水雅樹 (阪大基礎工)
歳差回転球体流による磁場形成

地球の歳差運動(自転周期1日,歳差周期25800年,両回転軸の交角23.5度)の地磁気の形成や変動への関わりは,未解決の興味深い研究課題である.われわれは,歳差回転する球内の電磁流体の流れによる磁場の形成過程および磁場構造を,MHD方程式の直接数値シミュレーションにより調べている.本講演では,流れ場と磁場の空間構造の相関に着目し,ダイナモ機構を考察する.


小松崎慎人* (筑波大数物),本池巧 (湘北短大),有光敏彦 (筑波大数物)
n^∞不安定周期軌道の階層構造の解析

1次元力学系が持つn^∞超安定周期軌道はnスケールカントール集合と同等な自己相似構造を持つ.それに対して十分発達したカオス領域においては,不安定化したn^∞周期軌道がnスケールカントール集合と異なる階層構造を持つことを示す.また,各階層での最小幅の線分に着目して,超安定状態から十分発達したカオスまで周期軌道の階層構造がどのように変化するか調べた結果を報告する.有光・有光のマルティフラクタルPDF理論(MPDFT)は,乱流の渦構造は力学系が持つ全てのn^∞周期軌道と同等な階層構造を含むという仮定に基づいた解析方法であり,n^∞周期軌道と同等な階層構造が同じマルティフラクタルスペクトルを持っていることが予想される.この予想を検証する上で,今回報告する周期軌道の階層構造の解析が有用と思われる.


水田敦* ,松本剛,藤定義 (京大院理)
定常2次元逆カスケード乱流の慣性領域は拡がるか?

高波数に局在するランダム外力を加えるとともに,ラプラシアンの負羃に比例する大スケール散逸を加えて統計的に定常な2次元逆カスケード乱流の数値シミュレーションを行った.システムサイズを固定し,解像度と外力波数を大きくする際のスケーリング則をもとに慣性領域が拡がり得ないことについて議論する.


本池巧* (湘北短大),有光敏彦 (筑波大数理)
力学系におけるn^∞周期軌道と乱流のマルティフラクタル構造

有光・有光のマルティフラクタル確率密度関数理論(MPDFT)では,δ^(-k)のスケールで観測した一連のPDFを使って乱流の特性を導き出している.乱流を拡大率δのスケールで観測することは,ある意味で,乱流のマルティフラクタル構造から,δスケール・カントール集合と同等な自己相似構造を抽出しているとみなすことができる.

一方で,1次元写像力学系に於けるn^∞不安定周期軌道は,軌道点を適切に分類することでnスケール・カントール集合と同等な構造を持っていることがわかってきている.従来,乱流系とカオス力学系の関連性は,予測不可能な複雑な振る舞いという視点で主に論じられてきたが,自己相似性という新しい視点から捉えることが可能ではないかと思われる.

 n^∞周期軌道は,安定周期軌道とカオス軌道の境界であるため,ベキ的な不安定性をしめす.そのベキ指数はLyra-Tsallisのスケーリング関係式によって軌道のマルティフラクタルスペクトルから求まることが明らかとなっている.n^∞周期軌道の階層構造および軌道拡大率の振る舞いを詳細に解析した結果,軌道内部の至るところに,Lyra-Tsallisよりも強いベキ的増大を示す振る舞いが含まれていることがわかってきた.今回の講演では,新しいベキ的増大現象の階層構造およびスケーリング関係式について解析した結果について報告し,低次元力学系から乱流への新しいアプローチのきっかけとしたいと思う.


毛利英明 (気象研)
乱流速度場における大スケール変動の統計熱力学形式による記述

乱流速度場の非常に大きなスケールにおける変動を,風洞実験から得られた格子乱流や境界層乱流のデータに基づいて調べ,その統計則を統計熱力学形式に基づいて議論する.


永田雅人*, 出口健悟 (京大院工)
平面クエット・ポアズイユ流のホモトピー解析

平面クエット流の複数個の解を平面ポアズイユ流にホモトピー接続することで, 新たな解が平面ポアズイユ流に存在し, それらの解のいくつかは, 現在知られている最も低いレイノルズ数(Waleffe,2003)よりも小さなレイノルズ数領域でサドル・ノード分岐を起こしていることを示す.


中原明生*,中山寛士,松尾洋介 (日大理工)
ペーストの流れの記憶と粉の協同現象

粉と水を混ぜて作ったペーストは揺れや流れを記憶できる場合があり,そしてその記憶は乾燥破壊時に発生する亀裂パターンとして視覚化される.今回,流れを記憶しない粉に流れを記憶する粉を混ぜたペーストで実験したところ,粉の協同現象としてのメモリー効果が見られたので,発表する.


大須賀健 (国立天文台)
ブラックホール降着流・噴出流の輻射磁気流体シミュレーション [招待講演]

我々が行ったブラックホール周囲の大局的輻射磁気流体シミュレーションは,乱流状態にあるガス円盤や円盤から噴出するジェットの構造を明らかにした.ブラックホールへの降着率が変わると,円盤やジェットの描像も変わることが観測的に予言されているが,我々は,その多様な降着モードを一つの数値コードで再現することに成功した.


沖野真也*,永田雅人 (京大院工)
矩形ダクト内流れにおける定常進行波解

断面のアスペクト比が3.2よりも小さい矩形ダクト内の流れは任意のReynolds数において線形安定であり, それゆえ層流からの分岐解は存在しない. 本講演では, saddle-node分岐により生じる正方形ダクト内流れの多様な非線形解について述べる. 我々はそのいずれもが既に発見されている円管内流れの非線形解との対応づけがなされうることを見出した. さらに, ダクト断面のアスペクト比を10程度にまで連続的に増加させたとき, スパン方向に乱れの局在した非線形解が得られた.


杉山和靖* (東大院工), Rui Ni, Tak Shing Chan, Sheng-Qi Zhou, Heng-Dong Xi, Ke-Qing Xia (The Chinese Univ. of Hong Kong), Richard J. A. M. Stevens, Chao Sun, Detlef Lohse (Twente Univ.), Siegfried Grossmann (Philipps-Universitaet)
二次元熱対流における大規模循環の反転 [招待講演]

レイリー・べナール対流乱流においては,大規模循環流れが形成し,その回転方向は,突如,反転することが知られている.本研究では,アスペクト比が1の二次元流れを対象とした数値シミュレーションと,厚みが薄い矩形容器を対象とした実験を行う.循環の回転方向の同定法について述べ,循環の反転に対する角部の二次的流れの影響と,その時間間隔を議論する.


田中光宏 (岐大工)
波動乱流における「凍結乱流」現象

波動乱流においては,3波もしくは4波共鳴相互作用による成分波間のエネルギー輸送が,スペクトル変動の原動力となっている.しかし実空間において周期境界条件を課すなど対象領域を有限にすると,波数ベクトル空間が離散化され,その結果共鳴相互作用が阻害され,エネルギーがカスケードしない状況が出現する場合がある.この現象は凍結乱流(frozen turbulence)と呼ばれる.本研究では,3波共鳴相互作用を許すある簡単なモデルを対象として,凍結乱流現象の出現条件などについて数値的に調べた結果を報告する.


高岡正憲*(同志社大理工),松本剛 (京大院理)
Ornstein-Uhlenbeck過程での大スケール揺らぎの統計則についてII

 昨年度は1点の揺らぎの2条を粗視化した量について報告したが,2点の構造関数を粗視化した量についても解析表現が得られた.分布関数についても何か示唆が得られることを期待している.


巽友正 (京大理)
交差独立性完結仮説による一様等方性乱流理論の再考

著者がこれまで,一様等方性乱流を対象に進めてきた「交差独立性完結仮説」による乱流理論の構築が,最近,行き詰まりを見せてきたので,昨年,非一様乱流の原点に立ち返って,理論の再構築を行なった.幸い作業は成功し,速度分布方程式の厳密な意味での「完結」を行なうことができた.今回,この結果を一様等方性乱流に適用して,その行き詰まりを打開し,整合性のある理論の再構築を試みる.


辻義之 (名大工)
乱流計測がもたらす統計則の新たな解釈 [招待講演]

乱流計測法の精度の向上は,従来から受け入れられてきた統計則に含まれる任意定数の値の修正のみならず,関数型にも見直しの余地のあることを示唆している.発表では特に壁乱流について,高Re数でこの問題を考えてみたい.


渡邊威*,後藤俊幸 (名工大院工)
大規模並列計算による乱流中の高分子モデルの挙動解析

高分子モデル(ダンベルモデル)を乱流中に大多数分散させた大規模並列計算を試みた.高分子集団の挙動とその統計,および乱流の統計性質への影響に関して解析した結果を報告する.


Last update: Mon Dec 20 17:23:42 JST 2010
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