開催日程 2012年1月11日(水)--13日(金)
開催場所 京大 数理解析研究所 111号室 (交通案内)
研究代表者 藤 定義 (京都大学 理学研究科)
プログラム (PDF)
| 12:55--13:00 | 研究代表者 挨拶 |
| 13:00--13:30 | 高岡正憲 (同志社大理工) Navier-Stokes乱流での大スケール揺らぎについて |
| 13:30--14:00 | 木田重雄* (同志社大理工),清水雅樹 (阪大基礎工) 歳差球内の環状乱流生成とダイナモ |
| 14:00--15:00 | 横井喜充 (東大 生産研 基礎系部門) ダイナモ的世界観 |
| 15:30--16:00 | 木村恵二*,竹広真一,山田道夫 (京大数理研) 回転球殻内のBoussinesq熱対流問題の安定性と分岐構造及び熱対流が両側球に及ぼす影響 |
| 16:00--17:00 | 鈴木建 (名大院理) 太陽風や差動回転降着円盤における磁気流体乱流について |
| 9:00--9:30 | 毛利英明 (気象研) 乱流エネルギー散逸率の規格化について |
| 9:30--10:00 | 中嶋大樹*(名工大),畑中祥吾 (名工大),三浦英昭 (核融合研),後藤俊幸 (名工大) 低マッハ数の圧縮性乱流と非圧縮性乱流について |
| 10:00--10:30 | 小嶌康史 (広大院理) Hallドリフトの効果を考慮した磁場の誘導方程式の乱流や不安性 |
| 11:00--12:00 | 龍野智哉 (電通大情報理工) 磁化プラズマ中の2次元乱流に関する位相空間内の解析 |
| 13:30--14:00 | 巽友正 (京大理) 流体乱流の慣性散逸性の起源 |
| 14:00--15:00 | 宮本雲平 (立教大理) 流体とブラックホールの間に見られる類似性・双対性 |
| 15:30--16:00 | 有木健人*(東大院理), 半場藤弘 (東大生産研) 平均Lagrange的繰り込み理論による非一様性効果の解析法 |
| 16:00--16:30 | 木村芳文 (名大多元数理) 安定成層乱流のエネルギートランスファーとスペクトル |
| 16:30--17:00 | 大木谷耕司*,Mark Dowker (Sheffield大) 3次元Navier-Stokes 方程式とBurgers方程式の比較数値実験 |
| 18:00-- | 懇親会 |
| 9:00--9:30 | 小崎友裕*,鈴木祐有紀,渡邊威,後藤俊幸 (名工大) 乱流混合と雲マイクロ物理過程 |
| 9:30--10:00 | 横嶋哲*(静大工),益子岳史 (静大工),松坂隆弘 (静大院工),宮原高志 (静大工) 一様等方乱流中のラグランジュ粒子の接触特性評価 |
| 10:00--10:30 | 田中満 (京工繊大工芸) 一様せん断乱流中の微細気泡の運動 |
| 11:00--11:30 | 上之和人 液膜流下の結晶成長現象における普遍性 |
| 11:30--12:00 | 赤嶺博史*(同志社大院),水島二郎 (同志社大理工) カルマン渦列の消滅と再生成のメカニズム |
| 13:30--14:00 | 藤原昌弘*,後藤晋,山登将宏 (岡山大院) 歳差運動をする球体および回転楕円体容器内の乱流 |
| 14:00--15:00 | 大信田丈志* (鳥取大),大槻道夫 (青山学院大),後藤晋 (岡山大),中原明生 (日大),松本剛 (京大) ガラス系の統計理論に対する流体屋のアプローチ |
| 15:30--16:00 | 山本義暢(山梨大)*,功刀資彰 (京大工) 高レイノルズ数MHD乱流場の大規模構造とスケーリング |
| 16:00--16:30 | 河原源太*,若林弘輝,武石恵介 (大阪大),Markus Uhlmann (KIT) 矩形ダクトにおける空間局在乱流構造 |
| 16:30--17:00 | 辻義之 (名大院工) 乱流境界層における圧力統計量の普遍性 |
講演要旨
角柱後流において発生するカルマン渦列は,角柱から角柱辺 長の50倍程度後方で消滅し,100倍程度後方で再出現する. カルマン渦列の消滅と再生成の機構を明らかにするために, 線形安定性解析および数値シミュレーションを行った.対称 定常解の安定性解析および一様流中に与えた渦の粘性散逸を 調べ,渦列の消滅機構を明らかにした.また,消滅してでき たせん断流の安定性解析から渦列の再生成の機構を明らかに した.
非一様乱流に対する理論的アプローチとして,平均Lagrange座標上での繰り込み理 論(仮称:Mean-Lagrangian Two-Scale Renormalization = MLTSR)を提案した.本 理論はTwo-Scale DIA(TSDIA)の発想を基に,座標変換共変性と整合性を考慮して構 成されている.講演では,理論の基本的構成に始まり,一様乱流にない非一様性特有 の効果を取り込んだ最近の理論的結果に加え,いくらかの将来の展望について話す.
流体を充填した回転容器の自転軸をゆっくりと歳差運 動させると,内部に強い乱流が維持されることが知られるが, その生成維持機構は未知である.これを解明するために,歳 差球体容器内の乱流に関して,厳密に同一の条件下での室内 実験と直接数値シミュレーションを行った.その結果,内部 領域において,まわりと比べ乱流強度が大きい特徴的な領域 が現れることが明らかとなった.また,球体容器に比べ回転 楕円体容器のほうが内部流体が乱れにくいという,興味深い 実験結果が得られたので併せて報告する.
アスペクト比が1から9の矩形ダクトに現れる空間局在乱流構造を 直接数値シミュレーションにより調べた結果を報告する.乱流 が持続する限界レイノルズ数や限界レイノルズ数において 認められる空間局在乱れのアスペクト比依存性について 検討したい.
歳差回転球内(自転軸と歳差軸が直交する)の磁気流体運動のDNSにより, 渦度と磁束密度の変動の大きな環状構造が観測された. この環状構造は自転軸から少し傾いた方向を法線とする大円の近傍に集中し, その平均構造は歳差座標系に相対的に静止しているが,細かい変動は自転と 同じ向きに移動している. 速度場と磁場の変動は,どちらも環状構造とと赤道面の交点付近で 生成されている. この生成のメカニズムを速度勾配テンソルの固有値解析等により明らかにする.
回転球殻内のBoussinesq熱対流問題について, 臨界点から分岐する,経度方向に伝播する定常進行波を Newton法によって求め,その安定領域を定めた. また両側球がトルクを受けて三軸回転するモデルを構築し 数値計算を行った結果, 臨界点から分岐する定常進行波の安定領域および熱対流パターンは 両側球が同期回転する場合とほとんど変化がないが, Rayleigh数を増大させると定常進行波が不安定化し, 内側球と外側球の回転軸が同方向の状態から有意な角度をもつ状態へと 遷移することを見出した.
密度成層は回転とともに地球流体の運動に特徴的な要素であり, その乱流に及ぼす影響は大気や海洋における現象を理解するうえ で非常に重要な役割を担っている.この講演では成層乱流におけ る基本的な問題としてエネルギーのトランスファーとスペクトル について最近の研究結果を報告する.
中性子星(パルサー・マグネター)の永遠的な磁場進化に関係 する,Hallドリフトの効果を考慮した磁場進化の方程式(誘導方程式) はその流体力学の渦度の式と類似性(相違もある)があり, カスケード的乱流や不安定が調べられている. 流体力学との話題(相互交流)のため,その内容の紹介と 自身の最新の数値計算を示す.
一般相対論では,定常なブラックホールが,温度やエントロピーといった量をもつ熱力学系であることが知られている.ただし,動的なブラックホールが同様の対応物を持つかは長年の謎とされていた.ところが,重力・素粒子研究で近年話題となっている「流体・重力対応(双対性)」によれば,動的なブラックホールは流体に対応するという.講演では,「ブラックホールと流体がどのように似ているか」「双対性がどのように定式化されるか」について述べたい.(参考:日本物理学会誌2011年8月号610頁『流体力学で高次元ブラックホールを理解する』)
速度揺らぎと相関長を用いて規格化した平均エネルギー散逸率の普遍性を,大型風洞で生成された格子乱流・境界層乱流・噴流において得られた速度変動の時系列データを用いて調べた結果を報告する.
非圧縮乱流の基礎理論はたとえばコルモゴロフスペクトルや 4/5法則などが知られており,間欠性についても多くのデータが得られている. 一方,圧縮性乱流においては,宇宙物理の文脈の中で上に対応する 基礎理論の研究が進んできた.本講演では圧縮性乱流の統計法則の 解明に向けてのDNSコード開発,低マッハ数における計算, および非圧縮性乱流の場合との比較について述べる.
3次元Navier-Stokes 方程式の解の正則性の問題を考えるため, 3次元Burgers方程式との比較数値実験を行う.後者では圧力項がないため 最大値原理が成立し,爆発は起きないことが知られている.ノルム,スペクトルの 時間発展,-(u・grad)pの分布,およびその局所エネルギー,エンストロフィー密度 との結合確率分布などを調べる.解挙動からは,むしろBurgers 方程式の方が より特異性が高いことがわかる.
また,速度の1成分で初期化した,パッシブスカラーの計算も行い,圧力項の有無 による両者の違いを吟味する.特に,数学解析で得られるエンストロフィー不等式 の sharpness を数値的に評価した.自由減衰乱流の場合に,dQ/dt+2 \nu P と Q^a P^b を両対数プロットすることで,べき法則を見出した(Q=エンストロフィー, P=パリンストロフィー).1次元Burgers, 3次元Burgers, 3次元Navier-Stokes, 4次元Navier-Stokes (3次元Navier-Stokes+パッシブスカラー)の場合に, 指数は,それぞれ 1, 0.7, 0.4, 0.4 であった.
液体やコロイド溶液などが,制御パラメータの変化(温度低下など)に より,ランダムな状態のまま固まってしまう(ダイナミクスが極端に 遅くなる)のがガラス系である. ガラス系に対する統計理論として は,短距離斥力相互作用するBrown粒子系から出発し,粒子の密度 (存在確率)のFourierモードに対する完結方程式を導く「モード結合 理論」(MCT)がよく知られているが,この理論には未だ多くの問題点が 残されている. 本講演では,流体力学におけるラベル変数の方法を 持ち込むことで,1次元の場合に,遅いダイナミクスを正しく求められる ことを示し,さらに今後の展望や乱流の統計理論との関連について論じる.
気象,気候予測において雲は重要な因子であり,発生,成長,輸送, 降雨,消滅の解明が待たれている.この雲の基本的物理過程を 解明するために,乱流による乾燥空気と湿潤空気との混合, それによるミクロンメートル程度の曇粒子の成長,分散,衝突,合体を 解析するための準備を進めてきた.本講演では,数値計算により 得られた乱流混合輸送,雲粒子追跡,平均雲粒子半径や分布について述べる.
太陽風や降着円盤をはじめとする宇宙の流体では,重力の影響 により密度などの背景場が非一様になる場合が多い. このような状況の下,磁気乱流がエネルギー,運動量や物質の 輸送に重要な寄与をすることがしばしばある. 本発表では,磁気乱流が宇宙流体の輸送過程に働く役割を,数 値実験の結果を示しつつ紹介する予定である.
以前の研究で,毛利氏らとともに大型風洞でのデータ解析により 大スケールで粗視化した揺らぎを調べ, 粗視化する長さが速度の積分長と同程度かそれより長いとき 対数正規分布で近似できることを見出した. また,この大スケールの対数正規分布の近似の程度や起源・普遍性を調べるために, 松本氏ともに相関のある単純な確率過程であるOrnstein-Uhlenbeck過程を解析している. 本講演では,これらを補完するために行ったNavier-Stokes乱流の数値シミュレーションにおける 大スケール揺らぎの統計性について報告する.
単純せん断中の単一気泡の運動に関しては多くの研究がなされ, その揚力係数のレイノルズ依存性などが調べられている.しかしながら, せん断乱流中の気泡の挙動については不明な点が多い.ここでは, 主流が鉛直方向を向く一様せん断乱流における微細気泡の運動を 数値計算により調べる.
非圧縮粘性流体における乱流の統計的性質は,粘性(Reynolds数の逆数)の値によって複雑に変化するが,非粘性の極限においては,有限のエネルギー散逸率を唯一のパラメターとする「慣性相似則」に従うことが知られている.このエネルギー散逸率の有限性は,これまで 「Kolmogorov (1941) の仮説」によるとされていたが,Tatsumi (2011) によって,それが「揺動散逸定理」の結果であることが示された.この結果は,MHD乱流や量子乱流などの非Navier-Stokes流体における乱流現象の理解に新紀元を拓くものと言える.
宇宙空間におけるプラズマは衝突が少ないため局所 熱平衡が成り立たず,Boltzmann 方程式などのよう な位相空間における記述が必要とされることが多い. 本講演では磁化プラズマに対して Boltzmann 方程式 を簡約化したジャイロ運動論を用い,2次元乱流の 位相空間における発展を理論と数値シミュレーショ ンによって解析した結果を報告する.
乱流境界層中の平均速度,変動rms,スペクトルなど 速度変動に基づく統計量には,普遍的な相似則が実験的に 確認されている.最近,著者らは異なる大型風洞での圧力 計測から,同様の相似則について考察したが,普遍的な 相似則の存在は期待できないかと予想している.この点に ついて,実験データの解析に基づき報告したい.
寒冷地では,屋根雪の融解水が再凍結する際に氷柱の表面上によくリング状の波模様が現れる.このとき氷柱表面は過冷却な液膜流で覆われている.鍾乳石表面が過飽和な炭酸カルシウム水溶液流で覆われているとき氷柱と類似の凸凹模様が現れる.金平糖は表面が過飽和濃度に近いショ糖水溶液で覆われているとき角が発生する.液膜の厚さと凸凹や角の間隔には相関が見られる.液膜流下の結晶成長時における界面の形態不安定という立場から理論モデルを構築し諸現象の普遍性について報告する.
近年高レイノルズ数における外層での大規模構造に注目が集まっている. 本研究では,高レイノルズ数チャンネル乱流場に磁場を印加することによる 大規模構造への影響,内層乱流構造のスケーリングパラメータに関して 直接数値計算を用いた解析を実行した.その結果,内層においては磁場の影響に より大規模構造が縮退し,レイノルズ応力の勾配に基づく実効乱流レイノルズ数 により,その空間構造がスケーリングできることを示した.
乱流ダイナモは,天体宇宙現象に見られる磁場を生成し維持する機構の候補として議論されてきた.「平均場ダイナモ」がいくつもの含意(connotation)とともに語られ,多くの批判を浴びているのはよく知られることである.まず,これらの含意と批判について,どのように考えるべきかについて議論する.より広い意味でとらえると,ダイナモ的なものの見方は多くの自然現象を捉える際に有効な考え方であることがわかる.例えば,電磁流体では乱れと磁場の相互作用によって大局的な流れ場が誘起されることがあり,いくつかの理工学現象に適用することができる.乱流ダイナモを広い視点から捉え,その結果どのようなことが言えるかについて紹介する.
一様等方乱流中に投下された多数のラグランジュ粒子の相互接触現象を 直接数値シミュレーションにより再現し,その特性を検討した. 接触率および接触継続時間のレイノルズ数依存性を明らかにした.