大スケール流体運動と乱流揺らぎ

京大 数理解析研究所 共同研究集会

開催日程 2014年1月8日(水)--10日(金)

開催場所 京大 数理解析研究所 420号室 (交通案内)

研究代表者 藤 定義 (京都大学 理学研究科)

プログラム (PDF)

1月8日(水)


    10:55--11:00  研究代表者 挨拶

    11:00--12:00  一本潔 (京大 附属天文台)
 太陽にみる磁気対流の様相

    13:30--14:00  岩山隆寛*(神戸大理)、渡邊威(名工大工)
 減衰性2次元乱流の普遍的赤外領域スペクトル
    14:00--14:30  中村優佑*、半場藤弘 (東大生研)
 チャネル乱流におけるエネルギー輸送と散逸率の解析

    15:00--15:30  阿部和貴*、水島二郎(同大理工)、横山直人(京大院工)
 不安定性により発生するバスタブ渦
    15:30--16:00  毛利英明(気象研)
 乱流間欠性の対数安定分布理論について

1月9日(木)


    9:00--9:30  後藤晋*、清水雅樹、河原源太(阪大・基礎工)
 歳差球体内に維持される乱流の混合能力の定量化
    9:30--10:00  有木 健人*、半場 藤弘(東大院理)
 平均流と揺動場のスケール共存と変数分離
    10:00--10:30  中原明生*、藤掛泰人、中山寛士、松尾洋介 (日大理工)、大信田丈志(鳥取大工)、大槻道夫(島根大総合理工)、狐崎創(奈良女子大物理)
 ペーストの流れの記憶の多様性

    11:00--12:00  佐々真一(京大院理)
 分子の世界から乱流をみる

    13:30--14:30  後藤俊幸(名工大)
 パッシブスカラー乱流の統計理論と普遍性について
    14:30--15:00  鈴木建*、犬塚修一郎 (名大院理)
 降着円盤の磁気流体乱流

    15:30--16:00  Zou Rong*(九大数理)、福本康秀(九大MI研)
 Short-wavelength analysis of magnetorotational instability of an ion-electron-neutral plasma
    16:00--16:20  Pinaki Chakraborty* (OIST) and Gustavo Gioia (OIST)
 A spectral theory of turbulent friction on rough and smooth walls
    16:20--16:40  Chien-Chia Liu* (OIST), Gustavo Gioia (OIST), and Pinaki Chakraborty (OIST)
 Local version of the spectral link in turbulent friction
    16:40--17:00  Gustavo Gioia* (OIST), Nicholas Guttenberg (Univ. Illionis at Urbana-Champaign), Nigel Goldenfeld (Univ. Illionis at Urbana-Champaign) and Pinaki Chakraborty (OIST)
 A spectral theory of the mean-velocity profile in turbulent pipe flows

    18:00--  懇親会

1月10日(金)


    9:00--9:30  河原 源太*,清水 雅樹(阪大),J. R. Lustro(フィリピン大),L. van Veen(オンタリオ工科大)
 ミニマル平面クエット流におけるホモクリニック軌道と過渡的乱れの発生
    9:30--10:00  清水雅樹*、河原源太 (阪大基工)
 ミニマル平面クエット流の大域分岐構造と境界クライシス
    10:00--10:30  石原 卓*、Pradeep Jha(名大院工)、金田行雄(愛工大)、Julian Hunt(UCL)
 高レイノルズ数乱流中の薄い剪断層とその時間変化について

    11:00--12:00  梶島岳夫*、竹内伸太郎(阪大工)
 固液二相流における粒子群の挙動と熱伝達

    13:30--14:30  関本 敦*、Siwei Dong, Javier Jimenez (マドリード工科大学)
 一様剪断流における不安定周期解
    14:30--15:00  三村和男 (東海大)
 閉ループ内自然対流における乱流の役割

    15:30--16:00  安田達哉*、河原源太、後藤晋 (大阪大学)
 Large eddy simulation of box turbulence and unstable periodic motion
    16:00--16:30  辻 義之*(名大工)
 圧力統計量に基づく壁乱流中の組織構造

講演要旨


阿部和貴*、水島二郎(同大理工)、横山直人(京大院工)
不安定性により発生するバスタブ渦

直方体容器内に生じるバスタブ渦の発生メカニズムを数値シミュレーションにより 調べた結果、バスタブ渦は対称定常流の不安定性により発生する臨界現象であることが 分かった。解の分岐構造はピッチフォーク分岐であり、最初の不安定性でピッチフ ォーク分岐によりバスタブ渦が生じ、レイノルズ数を大きくすると解の点対称性が 破れる第2の不安定性でさらにピッチフォーク分岐が生じ、 さらにレイノルズ数を大きくすると流れは振動流へと遷移することが分かった。


有木 健人*、半場 藤弘(東大院理)
平均流と揺動場のスケール共存と変数分離

一様等方乱流とは異なり、一般の流体乱流は非一様な平均流を伴うため、揺らぎと平均流の同時理解が欠かせない。 "平均的量の構造と揺らぎの構造の空間スケールが十分に離れている"という直観的仮定を基本としたモデルは、工学分野 を始めとして多く提案されているが、これら両スケールが十分に分離しない例(壁面付近の振る舞いなど)が現実には多く見られ、 これらを乗り越えることが、更なる進展の鍵となることが期待される。本講演では、平均場と揺動場のスケール共存性を認めつつ、 これらの数学的記述を可能にし得る手法の開発の一端を紹介する。


Pinaki Chakraborty* (Okinawa Institute of Science and Technology) and Gustavo Gioia (Okinawa Institute of Science and Technology)
A spectral theory of turbulent friction on rough and smooth walls

There is a missing link between the macroscopic properties of turbulent flows, such as the frictional drag of a wall-bounded flow, and the turbulent spectrum. We establish a link between the turbulent spectrum and the frictional drag of pipe flows. Using momentum-transfer theory and the usual model of the spectrum—a power-law inertial range of spectral exponent 5/3 with corrections for the dissipative range and the energetic range—we derive a complete, unprecedented analytical version of Nikuradse’s diagram, the classical experimental diagram that evinces the dependence of the frictional drag of a pipe flow on the Reynolds number of the flow, Re, and the roughness of the pipe. Momentum-transfer theory yields the empirical scalings of Blasius and Strickler, which govern the frictional drag at high Re in smooth and rough pipes, respectively. The exponents of Blasius and Strickler turn out to be recast forms of the spectral exponent 5/3.


Gustavo Gioia* (Okinawa Institute of Science and Technology), Nicholas Guttenberg (University of Illinois at Urbana-Champaign), Nigel Goldenfeld (University of Illinois at Urbana-Champaign) and Pinaki Chakraborty (Okinawa Institute of Science and Technology)
A spectral theory of the mean-velocity profile in turbulent pipe flows

It has long been surmised that the mean-velocity profile (MVP) of pipe flows is closely related to the spectrum of turbulent energy. We perform a spectral analysis to identify the eddies that dominate the production of shear stress via momentum transfer. This analysis allows us to express the MVP as a functional of the spectrum. Each part of the MVP relates to a specific spectral range: the buffer layer to the dissipative range, the log layer to the inertial range, and the wake to the energetic range. The parameters of the spectrum set the thickness of the viscous layer, the amplitude of the buffer layer, and the amplitude of the wake.


後藤晋*、清水雅樹、河原源太(阪大・基礎工)
歳差球体内に維持される乱流の混合能力の定量化

有限の個数の流体粒子群を数値的に追跡することで混 合能力を定量化する方法を提案し、これを用いて「自転軸が それに垂直な軸のまわりを歳差運動する球形容器内」に維持 される乱流の混合能力を調べた。その結果、この容器内の乱 流混合は、歳差角速度の大きさが自転角速度の大きさのおよ そ10%程度のときにもっとも促進され、また、そのときエネル ギー効率もほぼ最大となることを明らかにした。講演では、 このような弱い歳差運動が駆動する強い乱流混合の物理的起 源についても述べる。


後藤俊幸* (名工大) [招待講演]
パッシブスカラー乱流の統計理論と普遍性について

乱流により輸送されるパッシブスカラーの揺らぎのスペクトルはシュミット数 Sc=ν/κの大きさにより、慣性移流領域(Sc=O(1))、慣性拡散領域(Sc<<1)、粘 性移流領域(Sc>>1)が存在する。各領域におけるスカラースペクトルを基礎方程 式からどう導くかについては多くの理論があるがいまだ十分ではない。粘性移流 領域(Sc>>1)でのスペクトル理論を検証し、スカラースペクトルの普遍性の強度 について述べる。また、慣性移流領域(Sc=1)におけるスカラー場の構造関数の スケーリング指数が実験やDNSにより得られているが、速度場の場合と比べると ばらつきがとても大きい。このスケーリング指数の普遍性の強さを、大規模シ ミュレーションデータの結果を用いながら検証する。


一本潔 (京大 附属天文台)
太陽にみる磁気対流の様相 [招待講演]

太陽には様々なスケールの対流が存在し、それが磁場と相互作用することで、ある程度秩序ある、或いはより乱雑な流れの構造を形成している。本講演では空間分解能の向上によって明らかになってきた太陽面の磁気対流の様相を、観測者の立場から紹介する。


石原 卓*、Pradeep Jha(名大院工)、金田行雄(愛工大)、Julian Hunt(UCL)
高レイノルズ数乱流中の薄い剪断層とその時間変化について

近年、多くの強い管状渦が密に集合して,シャープな界面をもつ薄い剪断層を 形成することが高レイノルズ数乱流の特徴であることが乱流の大規模直接数値 計算(DNS)データ解析により明らかになってきた。講演では、その薄い剪断層 の性質と役割および動力学についてこれまでに調べた結果を報告する。


岩山隆寛*(神戸大理)、渡邊威(名工大工)
減衰性2次元乱流の普遍的赤外領域スペクトル

いくつかの地球流体力学的2次元流体系を統一的に記述できる一般化された2次 元流体系の減衰性乱流において,エンストロフィースペクトルの低波数領域( 赤外領域)に形成されるスペクトルを議論する.赤外領域のエンストロフィー スペクトルの波数の冪則は、系に含まれるパラメターalphaに依存せず普遍 的であることを,完結理論と数値実験により示す.


梶島岳夫*, 竹内伸太郎(阪大工)[招待講演]
固液二相流における粒子群の挙動と熱伝達

流体に分散体を添加することにより,流れや伝熱が著しく変化する場合がある. われわれは,中立密度の固液二相媒体の熱流動を直接数値シミュレーションに よって調べた.固定直交格子を用い,移動境界には独自の熱流束モデルを適用し て,運動する多数の固体の内部の温度分布も求めた.その結果,ある条件範囲内 で,単相流における伝導や対流とは異なる挙動が見いだされ,固体内の熱伝導と 固体周りの対流の時間スケール比で特徴づけられることがわかった.これも含 め,広範なレイリー数,固液の熱伝導率比,粒子径や固体体積率の条件に関して システムの熱伝導特性を解析した結果を報告する.


河原 源太*,清水 雅樹(阪大),J. R. Lustro(フィリピン大),L. van Veen(オンタリオ工科大)
ミニマル平面クエット流におけるホモクリニック軌道と過渡的乱れの発生

ミニマル平面クエット流におけるホモクリニック軌道を数値的に求め, 有限寿命の過渡的な乱れが発生する下限レイノルズ数を, タンジェンシーによるホモクリニック軌道の出現により決定した結果 を報告する. また,過渡的乱れの発生を直接数値シミュレーションにより観測した 結果との比較も行う予定である.


Chien-Chia Liu * , Gustavo Gioia, and Pinaki Chakraborty (OIST)
Local version of the spectral link in turbulent friction

The spectral link provides a novel relation between the frictional drag and the exponent "α" of the turbulent energy spectrum.The spectral link has been verified experimentally in soap-film channels wherein the value of α is uniform across the width of the channel. Here we perform experiments in soap-film channels wherein the value of α is non-uniform across the width of the channel. Our measurements of frictional drag are in excellent accord with a local version of the spectral link.


三村和男(東海大)
閉ループ内自然対流における乱流の役割

閉ループ内熱対流は、層流状態が維持されている間は、 主流のローレンツ・ライクなカオス的反転が実現するが、 乱流状態に遷移すると、乱流安定を含め、マクロな振る舞いの、 の特徴に多重性が認められる。


毛利英明(気象研)
乱流間欠性の対数安定分布理論について

乱流エネルギー散逸率の対数安定分布理論(Kida, 1991)は、散逸率の確率密度分布が粗視化スケール間で相似性を持つと仮定して構成された、間欠性の統計理論である。近年における理論・実験・数値計算の進展に基づいて、この理論に関する議論を行いたい。


中原明生*、藤掛泰人、中山寛士、松尾洋介 (日大理工)、大信田丈志(鳥取大工)、大槻道夫(島根大総合理工)、狐崎創(奈良女子大物理)
ペーストの流れの記憶の多様性

粉と水を混ぜたペーストは高濃度の状態では塑性を持つゆえに、揺れや流 れの方向を記憶できる。これまで実験してきたペーストでは、流れを体験した時 に記憶として形成される構造は、乾燥破壊させると「乾燥前に体験した流れ」に 「平行」に亀裂が走る形で視覚化された。ところが、ある種のペーストでは同じ ように流れを体験したはずなのに、乾燥破壊で視覚化した時に亀裂が走る方向が 「乾燥前に体験した流れ」に「垂直」になっていることがわかった。同じように 流れを体験したはずなのに、なぜ記憶として残る構造が流れに平行であったり垂 直であったりと異なるのか、その違いを解明していく。


中村優佑*、半場藤弘 (東大生研)
チャネル乱流におけるエネルギー輸送と散逸率の解析

k-εモデルにおいて、乱流エネルギーkの輸送方程式は、DNSを用いて各項のモデルが検証できるが、乱流エネルギー散逸率εの輸送方程式は、厳密な輸送方程式とモデルの各項が対応しない。 そこで本研究は、フィルター操作を用いて、低波数側から高波数側へのエネルギー輸送を散逸率と 再定義し、その輸送方程式を導出し、チャネル乱流での直接数値計算の結果を用いて、エネルギーの流れを確認した。 これにより、ε輸送方程式のモデル検証と改良につながると期待される。


佐々真一 (京大院理) [招待講演]
分子の世界から乱流をみる

乱流現象は流体方程式でよく記述されることは知られている。ところで、流体は原子・分子から成り立っているので、原子・分子の運動方程式をみても乱流現象は記述されるはずである。そのふたつの記述の橋渡しについて議論したい。


関本 敦*、Siwei Dong, Javier Jimenez (マドリード工科大学) [招待講演]
一様剪断流における不安定周期解

一様剪断乱流にも壁乱流にみられるようなストリーク構造や渦構造が観測されており、 大小さまざまなスケールの運動の非線形相互作用を調べる上で非常に有用な流れである。 一様剪断流には流れ場を特徴付ける長さスケールが平均流になく、 理論的には乱流エネルギーは無限大まで増幅し続ける。 一方、数値シミュレーションでは有限の計算領域を扱うため、 初期撹乱場から発展した乱流場は、ある時点で計算領域の影響を受け始める。 通常はこの時点で計算を止めるが、さらに計算を継続すると統計的に定常な乱流状態が実現できる。

この流れは乱流の大スケール運動が計算領域による拘束を受けるという意味でミニマル乱流といえる。 ストリークの再生成や準周期的なバースト現象が観測でき、乱流統計量は平行平板間乱流の対数領域のものとよく一致する。さらに、他の壁乱流と同様に、一様剪断流中の不安定周期解をニュートン法によって数値的に求めることができた。千鳥配列した縦渦をもつ解、スパン方向に鏡像対称性をもつ解があり、スパン方向の対称性が破れた解も得られている。また、ストリークの不安定化、縦渦の成長と崩壊、ストリークの再生成というサイクルを示すものもある。 求められた周期解の振る舞いを調べ、乱流遷移や生成維持機構、乱流バーストとの関連性を議論する。


清水雅樹*、河原源太 (阪大基工)
ミニマル平面クエット流の大域分岐構造と境界クライシス

直接数値計算を用いて,ミニマル平面クエット流のカオス発生に伴う諸現象につ いて述べる.初期にサドル・ノード分岐で発生する1対の非線形1周期解(それ ぞれ安定と不安定)は,局所安定性をしばらく保ち,層流解と安定1周期解が共 に安定な状態が継続される.その間に後続して発生するサドル・ノード解(多周 期解)の安定解においては,周期倍分岐カスケードを経てカオスアトラクタが発 生する.このカオスアトラクタは安定1周期解や層流解の吸引境界との2回の境 界クライシスによって,カオスサドルを経てフラクタル境界(層流解と安定1周 期解の境界)を構成することになる.初期に発生した安定1周期解が不安定化す るまでに,こうした一連の大域分岐構造が2度観測される.発表では上記の諸現 象について詳しく述べる.


鈴木建*、犬塚修一郎 (名大院理)
降着円盤の磁気流体乱流

様々な天体の周囲に形成される降着円盤においては、差動回転に起因して 流体乱流が発達する。本発表では特に、円盤の温度構造の違いによる大域的 流れの形成が、円盤内の磁気流体乱流に与える影響について調べた結果を 紹介する。


辻 義之*(名大工)
圧力統計量に基づく壁乱流中の組織構造

乱流境界層中で計測された圧力データに基づき、 組織構造(attached eddy model)について、 考察したい。また、壁面圧力のPDF型から、 境界層中の特徴的な構造を抽出できることを数値 計算データに基づき議論したい。


安田達哉*、河原源太、後藤晋 (大阪大学)
Large eddy simulation of box turbulence and unstable periodic motion

定常外力に駆動される周期箱乱流において数値的に発見された不安定周期解につ いて報告する。高レイノルズ数乱流の力学系は大自由度であるので、ラージ・エディ・ シミュレーションにより自由度低減を図り、また、ニュートン・クリロフ・フックステップ法 を用いることにより、上記の不安定周期解を数値的に求めた。この周期運動では、時 間間欠的なエネルギーカスケード事象が確認される。この周期解とコルモゴロフのマ イナス3分の5乗則との関連性についても考察する。


Zou Rong*(九大数理)、福本康秀(九大MI研)
Short-wavelength analysis of magnetorotational instability of an ion-electron-neutral plasma

Magnetorotational instability (MRI) is considered to trigger the turbulence necessary for the outward transport of angular momentum while accreting the mass to the center to form a star. We use the WKB analysis to analyze the standard and the helical MRI of an ion-electron-neutral plasma with Ohm diffusion, the Hall effect and ambipolar diffusion taken into account.